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COLUM BY HIROKAZU YOSHIDA.
建築家吉田裕一がお送りする不定期コラムです。


2006.12.27 (thu)
姉歯耐震強度偽装問題について その(1)

昨今の話題はこれ一色、さすがに避けては通れないのでコラムで扱ってみたいと思います。

この問題についてはいろんな人が様様なところで議論していると思いますが、論じる人によってかなり観点が変わり、結構的外れな意見も見られます。私は構造の専門家ではないので真の意味での技術的なところは論じる事は出来ませんが、出きるだけこの問題に内包されている闇の部分に迫れればと思っています。観点が多岐にわたると想定されるので何回かに分けての考察となると思います、その点ご容赦願います。

論点は大きく分けて3つだと思います。

ひとつは姉歯氏個人も含めて建築士としての資質の問題、もうひとつは彼が偽装にいたった社会的背景の問題、さらに偽装を許した建築界の構造。

最初のひとつについては、本人でないので何ともいえませんが、どのようなことであれ1個人として耐震強度を偽装すると言う事は許されるはずもありませんし、建築士の風上にも置けません。ただ、まだはっきりしていませんが、おそらく偽装をしているのは彼一人だけではないかと思います(-----と思いたい)。報道によると、木村建設以外の物件も偽造をしていたとのこと、まあ罪の意識の感覚はほとんど麻痺していてのしょう。考えようによっては一種の殺人行為にもなりかねないのに-------しかし歴史を紐解けば、もっと直接的に殺人行為に荷担している技術者は数限りなくある事が分かります。例はあまりよくないですが、あのエノラゲイによる広島の原爆を作った技術者は許されるのか!なんて言うのはその典型でしょう。

彼が偽造をしてまで守りたかったものは一体なんだったのでしょうか。(家庭、家族、信用?)

ただ、どうしてかあまり話題にはのらないのですが、建築確認を出した意匠担当の設計者の事務所はあまり表には出ません。平成設計が良く出てきますが、意匠担当の設計事務所としてよりも、木村建設の100%子会社であることや、総研の意のままに動いていた傀儡(かいらい)事務所としてのほうが話題になっています。本来なら設計者(全体統括として)としての責任はかなり重いと言わざるを得ません。(森田設計の森田さんはかわいそうでした、彼はうすうす偽装を分かっていたのでしょう)どうしてこういうことを言うかと言うと、確認申請書にはどこにも姉歯氏の名前は出てこないからです。しかし、不思議な事に、マスコミも含めて、確認申請書の構造計算書には姉歯一級建築士と書いてあるかのように報道しています。実際の確認申請書には建築主、設計者、監理者、施工業者の記入欄はあるが、構造設計者の記入欄はありません。その他設備設計で相談をしたものの記入欄があるだけです。TVのインタビューでどこかの構造事務所の所長が、構造設計は誰がやっても構わない決まり?になっていて、主婦でも、高校生でも、建築の勉強をしていないものでもいいんですって言ってましたが、まったくそのとおりで、書類上はあたかも一人の設計者が全てをこなしたかのように記載する事になっています。つまり、構造事務所は意匠設計事務所の下請け扱いにしか過ぎないのです。もっと言うと、彼が一級建築士であるかどうかと偽装とは関係ないってことです。彼は構造計算を主な業務として仕事をするために一級建築士事務所の名前が欲しかっただけに過ぎないのです。(ちなみに私が良く頼む構造設計士は二級建築士しか持っていませんが、結構大きな建物も計算します)だから、たとえ一級建築士を剥奪されても構造計算書の作成は出きるし、確認申請書に添付も可能ということになります。彼が証人喚問で口にした「一級建築士としての心の葛藤」うんぬんと言うのはただの言い逃れに過ぎないと私は思います。

おもしろいことに、審査機関もこのからくりは分かっていて、構造に関しては「構造の事務所さんと打ち合わせをして下さい」などと連絡をしてきます。建物の規模によっては構造はとても大事なファクターであり、下請けの状態になること自体が問題なんですが、まあ、このことは建築界の構造に関わる問題になるので、ここではあまり触れないこととします。良く銀行の女子行員による数年間による億単位の横領などが話題に出ますが、大事な部分を一人に任される事により、誰もチェックできない体制が生まれてしまい、さらには監査の目も潜り抜けてしまうという構図は今回の事件に似ています。------ -人命に関わる問題か否かは大きな違いですけれど--------。まあ、先日も福島の構造事務所の所長(何故か小嶋さんと言います---------姉歯も含めて東北ではたまに聞く名前です)が嘆いていましたが、構造を曲りなりにも良く理解している意匠設計屋はどれぐらいいるかというと、現実はお寒いものでしょう。本音のところ「いやあ、姉歯さんに頼むと柱や梁が細くて助かるよ、これに比べると他の構造屋は安全により過ぎて(過剰と言う意味)間取りの設計しずらくて困るよ」なんて感じていた人は結構いたんじゃないかと思われます。

さて次に彼が偽装にいたった背景についてですが、木村建設の篠塚元東京支店長からの圧力が直接の原因と言われていますが、この手の話は日常茶飯事でしょう。私を含め似たような圧力(事務所を変えてもいいんだよとか、今後仕事を出さないよ-----いわゆる干されるってやつとか)を受けた人は相当数に上るでしょう。まあ、当の本人(篠塚氏)にしてみれば、会社のためにした事で当たり前の事と感じているんでしょうけれども。この構図は全て、仕事の流れ、金の流れで、順位が決まってしまう事によります。篠塚支店長は架空請求書の作成により裏金作りもしていたようですが、ある意味、姉歯氏は言いなりだったのでしょう。構造計算と言う篠塚氏が出来ないことをしている姉歯氏を実際はもう少し尊敬しなければならない立場にあるという認識が彼の心のなかに欠けていたのです。又、姉歯氏も卑屈になる必要は決してなかったとも思います。だって、もし仕事の源泉が設計事務所からのものだったなら、立場は逆転するんだから。まあ、その場合篠塚氏は接待構成をかけるんでしょうけれども--------。TVでも見たと思いますが、ヒューザー本社や、小嶋社長の自宅、総研の内河社長の自宅や会社に比べ姉歯氏の事務所(自宅兼)のなんと貧相な事か、これは穿った考えかもしれませんが、偽装事件は姉歯氏にとっては、実はものすごく重要な仕事をしているのにまったく評価されない事(常に弱い立場にあるという意味で)についての彼なりの一種の報復にも似た行為とも言えるのではないでしょうか。

建築は実は多くの人たちの協同作業であると言う原点に立ちもどればこのような問題はなくなると思いますが、何より設計施工分離と言う大原則が守られないような社会情勢が生んだ結果だとも思います。設計監理の大事な役目はここにあります。

ただ、今回のように、建築主が不動産屋となると、すこし話はややっこしくなりますが、この件については次回ということにして今回はこれくらいにしたいと思います。


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